驚きのニュースが入ってきました。
現在、低コストファンドシリーズのまさに先頭を走るのがeMAXIS Slimシリーズです。
「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続けるファンド」を掲げ、他社の投資信託が値下げをすると、すぐにそれに追随する姿勢を貫いてきました。
もはや、他社はeMAXIS Slimシリーズに歯向かうことはできないのではないか・・・?
私の中ではそんな懸念さえ湧いてきていました。
そんな中、なんと予想外の伏兵、「たわらノーロードシリーズ」が、先進国株式とバランス(8資産均等型)の信託報酬大幅引き下げを発表し、eMAXIS Slimシリーズに噛みついてきたのです!
これにより、eMAXIS Slimシリーズの最安値の牙城を崩せたのか?
たわらノーロードとeMAXIS Slimのどっちを購入すべきなのか?
本日はこの2つの疑問に答えていきましょう。
たわらノーロード先進国株式・バランスが信託報酬大幅値下げ!eMAXIS Slimとどっちが安い?
たわらノーロードシリーズが、先進国株式とバランス(8資産均等型)の信託報酬の大幅値下げを決定しました。
この値下げについての結論は、次の3つです。
- 先進国株式は、eMAXIS Slimが純資産ボーナスによりわずかに安い
- バランス(8資産均等型)はeMAXIS Slimもたわらノーロードも同水準
- 実績を考えるとeMAXIS Slimシリーズへの投資がおすすめ
さらに、たわらノーロードシリーズの今回の値下げは、かなり無理をした結果であることもわかってきました。
順に見ていきましょう。
①先進国株式は、eMAXIS Slimが純資産ボーナスによりわずかに安い
たわらノーロード先進国株式は、2019年10月1日から、信託報酬を税抜0.2%から0.0999%へと引き下げます。
半額以下という大幅引き下げ、大バーゲンです。
これにより、eMAXIS Slim先進国株式インデックスと同水準の信託報酬になります。
ファンド名 | eMAXIS Slim先進国株式 | たわらノーロード先進国株式 |
信託報酬(税抜) | 0.0999% | 0.0999% |
しかし、eMAXIS Slim先進国株式は、純資産総額が500億円を突破したことにより、500億円を超える部分の信託報酬が安くなる「純資産ボーナス」が発動しています。
このため、たわらノーロード先進国株式が値下げをしてなお、わずかにeMAXIS Slim先進国株式インデックスの方が信託報酬が安くなっています。
②バランス(8資産均等型)はeMAXIS Slimもたわらノーロードも同水準
続いて、たわらノーロードバランス(8資産均等型)の信託報酬引き下げについて見ていきましょう。
たわらノーロードバランス(8資産均等型)の信託報酬は、2019年10月1日に、税抜0.22%から0.14%に引き下げられます。
たわらノーロード先進国株式の半額以下への値下げほどではありませんが、たわらノーロードバランス(8資産均等型)もかなりの値下げ幅です。
これにより、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)と同水準の信託報酬となります。
ファンド名 | eMAXIS Slimバランス | たわらノーロードバランス |
信託報酬(税抜) | 0.14% | 0.14% |
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)は、2019年9月時点で純資産が500億円に達しておらず、純資産ボーナスが発動していないので、この2つのファンドの信託報酬は完全に同水準ということになります。
ただし、現時点でeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)の純資産総額は300億円を突破しており、500億円に届くのも時間の問題であることから、このままだといずれeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)の方が信託報酬が安くなるでしょう。
③実績を考えるとeMAXIS Slimシリーズへの投資がおすすめ
それでは、「eMAXIS Slimシリーズ」と、今回大幅な信託報酬引き下げに踏み切った「たわらノーロードシリーズ」のどちらに投資をすれば良いのでしょうか。
私は、これまでの実績、そして今回のたわらノーロードシリーズの信託報酬引き下げの裏側を見ると、eMAXIS Slimシリーズへの投資がおすすめではないかと考えます。
どういうことか、詳しく見ていきましょう。
信託報酬の引き下げ実績と純資産ボーナスでeMAXIS Slimシリーズが一歩リード
今回のたわらノーロードシリーズの信託報酬引き下げは、インデックス投資家も予想していなかった英断で、インデックスファンド業界の競争環境に活気を与える非常に意味のある決断だったと思います。
しかし、それでもeMAXIS Slimシリーズを脅かすほどの決定ではありませんでした。
eMAXIS Slimシリーズは、「他社の値下げには徹底対抗する」と明言し、その言葉通り信託報酬を引き下げることで、実績を積み重ねてきました。
たわらノーロードシリーズも今回思い切った値下げをしたのですが、「他社が値下げをしてきた場合、今後我々も継続的に値下げをする」という言葉までは聞けませんでした。
よって、今後のことを考えると、確実に業界最低水準の手数料をキープしてくれるeMAXIS Slimシリーズの方が安心感があります。
さらに、eMAXIS Slimシリーズには、純資産総額が500億円を超えると信託報酬が下がっていく「純資産ボーナス」の仕組みがあります。
たわらノーロードシリーズは、今のところこうした仕組みがありません。
この点でも、eMAXIS Slimシリーズの方が優位だと言えるでしょう。
たわらノーロードの今回の信託報酬引き下げはかなり無理している
実は、今回のたわらノーロードシリーズの値下げは、かなり無理をしています。
次の表を見てください。
eMAXIS Slim 先進国株式 | たわらノーロード 先進国株式 | |
委託会社 (運用会社) | 0.03995% | 0.0299% |
販売会社 (証券会社・銀行) | 0.03995% | 0.05% |
受託会社 (財産管理) | 0.02% | 0.02% |
この表は、先進国株式ファンドの信託報酬0.0999%のうち、関係する会社の取り分の内訳を表したものです。
eMAXIS Slim先進国株式は、ファンドを運用する会社である三菱UFJ国際投信と、ファンドを販売する証券会社の取り分が同じになっています。
これは、eMAXIS Slimシリーズが設定されるときに、積極的な値下げを行うため、eMAXIS Slimシリーズを扱う販売会社とそういう約束をしているからです。
逆に言えば、この約束が出来ない会社との取引はしないという方針で、販路を絞っています。
一方、たわらノーロード先進国株式はどうでしょうか?
こちらは、運用会社であるアセットマネジメントOneの取り分が0.0299%、販売会社の取り分が0.05%と、銀行や証券会社などの販売会社の取り分が圧倒的に多いです。
たわらノーロードシリーズは、全国の銀行や証券会社に販路を拡大しています。
そのため、信託報酬を引き下げたいと考えても、販売会社が自分たちの取り分を大幅に引き下げることに合意しなかったのでしょう。
結果、eMAXIS Slimシリーズに対抗するためには、自分たち、運用会社の取り分を限界まで削るしかなかったのだと思います。
これだけ無理をして信託報酬の引き下げを行っているので、これ以上の引き下げ余力はもう残っていないと見るべきでしょう。
この事実からも、構造的にeMAXIS Slimシリーズへの投資の方が安心できることがわかりますね。
まとめ
以上、たわらノーロード先進国株式・バランス(8資産均等型)の信託報酬引き下げ発表に関連して、eMAXIS Slimとどっちが安いのか?どちらに投資をすべきなのかについて解説しました。
先進国株式についてはeMAXIS Slimの方が安く、バランス(8資産均等型)については現段階では同水準です。
しかし、
- eMAXIS Slimシリーズは信託報酬引き下げ実績を積み重ねていることから、今後の引き下げについても期待できること。
- eMAXIS Slimシリーズには純資産総額増加によって信託報酬が下がる仕組みがあり、たわらノーロードシリーズにはその仕組みがないこと。
- たわらノーロードシリーズは販路を広げすぎており、信託報酬引き下げのために、運用会社自身の利益を限界まで削らなければならないという構造的な問題を抱えていること。
以上、3点の理由から、私は引き続きeMAXIS Slimシリーズの購入をおすすめします。
ただ、たわらノーロードシリーズ(それを運用するアセットマネジメントOne)さんの取り組みは素晴らしいと思いますし、今後も頑張ってほしいです。
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